90’s MY Life(90’s MY Life returns) / the pillows

/img/2025/90s_my_Life.jpg

リリース:1990年(再発盤は2004年)


トラック

  1. 巴里の女性マリー
  2. ぼくは かけら
  3. すきとおる遠い手紙
  4. Never End
  5. 90’s MY Life
  6. ジングル・ベルがきこえる
  7. こんな日が続けばいいのに
  8. 僕の声が風に消されても
  9. 僕はアウトサイダー
  10. I Don’t Cry

紹介 / 感想

2025年2月1日をもって、the pillowsが解散した。私としても若い頃から長年好きだったバンドが解散するのはとても悲しく、今も完全に吹っ切れたわけではないのだが、この機会にピロウズのアルバムを"ほぼ"全て振り返ってみようと思う。35年という長い歴史を持つバンド故にいつ完走できるかはわからないので、気長に……。

ということで第1弾となるのはインディーズ時代のこのアルバム。
もちろん正確にはピロウズとして初のアルバムは『パントマイム』で、一応私もヤフオクか何かで手に入れたアルバムを持っているのだが、あまりに初期だし入手困難ということもあって、今回は割愛する。山中さんもインタビューで「『何とかその曲を聴きたい!』と思わないでほしい(苦笑)何とか探し出して聴こうという努力をしないでほしいな、この曲に関しては。そこまでのものでもないっていうか――。」とか語っているし。1ファン的には最初期の曲なのでもちろん歴史的な面白さはかなりあるけれど!

さてこの『90’s MY Life』も、もとのアルバムは( 『パントマイム』以上に!)入手困難で私も所持していないが、『90’s MY Life returns』と題した再発版が2004年に出ているため、正確にはこちらの紹介をする。こっちだったらもうちょっと入手性がいい……と思ったが同じぐらい入手困難かもしれない。サブスクもないのだけれど、『90’s MY Life』についてはスルーしたくないのでご了承いただきたい。

まずは最初に、ピロウズというバンドについて簡単に紹介しておこう。the pillowsは山中さわお(Vo/Gt)真鍋吉明(Gt)佐藤シンイチロウ(Dr)の3名にサポートベースを加えた形で長年活動をしていたが、まだこの頃には初期のリーダーである上田ケンジ(Ba)が在籍していた。この時期はピロウズの「第一期」と呼ばれていて、ストレートなバンド形態のサウンドに乗せて、キャッチーなメロディを聞かせようとする曲が多く見られる。まだバンドの方向性も確立しきっておらず、いろいろな曲をやろうというフレッシュな模索が感じられるのが第一期かもしれない。

アルバムの話で言うと、やっぱり収録曲でファン必聴なのは『巴里の少女マリー』だろう。山中さんの映画趣味を反映した曲というのはピロウズには結構あって、これもチャップリンの『巴里の少女』ベースにした曲らしい。そのうち元ネタの映画を見てみるやつもやってみたいものだ。
それはさておき、この曲は初期の名曲として有名で、ライブでも時々披露されていたり、あとはピロウズのトリビュート盤ではThe ピーズ with クハラカズユキによってカバーされている。クリーンなギターの音色が目立つ、ヨーロピアンで洗練された空気感があり、歌詞もお得意の(?)悲恋ソングで、かなりいい曲なんだよな。好きだ。 あとは『ペナルティーライフ』のおまけトラックでセルフカバーされた『ぼくは かけら』もいい。ビート感が強い踊れる曲で、ライブ映えという意味では初期でも随一の楽曲。これもセルフカバーされたこともあって最近でもライブで時々披露されていた。

Track5の『90’s MY Life』までがオリジナル収録曲で、以降のトラックはこの再発盤で追加されている曲だ。
ところで、この頃のピロウズのギターサウンドってthe smithsの系譜っぽいクリーンなアルペジオが目立っていて、この『~returns』で収録された『僕はアウトサイダー』『I Don’t Cry』なんかはかなりモロって感じのギターでいい。特に『I Don’t Cry』は80年代のギターポップっぽいフレッシュなギターが炸裂してていいなぁと思うんだけど、でもバンド自体がスミスの系譜かってと、そういうわけでもないんだよね。ギターポップとかネオアコとかポスト・パンクとかニュー・ウェーブとか、ギターサウンドから80’sのUKロックのジャンルを検討してみてもイマイチ当てはまらなくて、この頃のピロウズはやっぱりジャンルレスな感じがする。もちろん大雑把にロックではあるんだけど、でもスミス的なギターのニュアンスって誰もが聞いてロックって感じでもないわけじゃない。
多分日本のバンドだとピロウズが多大な影響を受けているコレクターズとかもちょっと近さがあるんだろうけど、でもコレクターズほどビートが強くない感じもあって。第一期はまだ形が定まる前のピロウズって感じが強いんだけど、それが面白かったりもする。

ギター・ポップつながりじゃあないけれど、the pillowsというバンド名はCherry Recordがリリースしたコンピレーション・アルバムのシリーズの『Pillows & Prayers』から来ているらしい。これを聞いてもこの頃のピロウズがこれの直接の系譜にいるわけじゃないよなぁと思うのだけれど、これはこれでめちゃくちゃカッコいいアルバムでおすすめ。
『90’s MY Life』がサブスクにないので、今回はせっかくなんで私の好きなギター・ポップの珠玉の名曲、『Pillows & Prayers 2』に収録のFantastic Somethingの『If She Doesn’t Smile』でも聞いてってください(?)


  1. 「the pillows cast [1989-2009] 20th Anniversary Special Edition」より ↩︎


Written By

アイコンに設定しているのはブルーアーカイブに登場する音楽ファン・鬼方カヨコさんであり、末茶藻中本人ではありません。