リリース:1994年
リリース:1991年
トラック
- キミがいる
- This is my fashion
- I Need Somebody
- Dear, my ‘first’ step
- 雨が降ってきたような気がする
- 雨にうたえば
- Kiss me, Baby
- あそこへ帰りたい
- ハロー・ガール
- FOREIGNER
- WANT TO SLEEP FOR…
- さようなら第三惑星
紹介 / 感想
the pillowsのメジャーアルバム1枚目。ジャケットでもそうであるように、まだバンド名の表記は「the PILLOWS」であった(後期は全て小文字であることが正式な表記だ)
発売はポニーキャニオン。ポニーキャニオンから発売の次作のアルバム「WHITE INCARNATION」までの時期がピロウズの第一期と言われていて、そして当時のリーダー上田ケンジ(Ba)が在籍していた時代となる。クレジットは全て「the PILLOWS」名義だが、この頃には山中さわお(Vo/Gt)と上田ケンジの手掛ける曲が混在している。トラック3,6の作曲が山中/上田共作で、8が上田作詞、12が上田作曲の曲ということらしい。1
路線としてはインディー前作の「90’s MY Life」の延長線にある印象で、シンプルな編成のバンドサウンドでメロディーを届けるポップナンバーが並ぶ。
トラック6の「雨にうたえば」はシングルカットされた曲。若干The Stone Roses感もある厚みがあってきらびやかなサウンドで、耳に残るリフのメロディーがあって、歌詞メロもグッと掴まれるキャッチーさのあるいい曲だ。今聞いても瑞々しさを感じる、会心のナンバーだと思う。トラック5の「雨が降ってきたような気がする」からそのまま繋がるように始まるのも"雨繋がり"でオシャレだ。
ちなみに、PVがポニーキャニオンから公開されている。みんな若い!
ちなみにこのシングルCDのカップリングが「キミとボクとお月様」だ。後年に本アルバム収録の「WANT TO SLEEP FOR…」と一緒にセルフ・カバーされているので、第一期の中だとこれらはファン知名度は高めの曲だろう。この「キミとボクとお月様」は顕著だが、この頃から切ない孤独さを感じさせる山中さわおの絶妙な作詞センスというのは見事に健在だったのだな、と感じさせる。
この「雨にうたえば」や、アルバムのリードトラックである「キミがいる」はメロディーが強くてキャッチーさがある曲なのだけど、一方で「This is my fashion」「Kiss me, Baby」「WANT TO SLEEP FOR…」といったパンキッシュでアッパーな強いビート感のある曲もあって、メロディーバンドとしてもライブバンドとしても、ピロウズの音楽的な歩みを感じさせるアルバムになっていると感じる。
トラック10の「FOREIGNER」がなかなかおもしろい。元々ギターサウンド的に接近はあったが、この曲は特にめちゃくちゃthe Smiths直系の楽曲って感じがする。空元気のような明るい曲調と歯切れのよいギターの曲で、「ジャッジャ」のキメで印象付けるのはスミスの「Panic」だし、アウトロには「Bigmouth Strikes Again」みたいなフレーズも入ってくるので、初期ピロウズの中でも群を抜いてスミスっぽい。
歌詞も面白くて「鼻柱へしおってくれよ 僕は図にのったイエロージャパニーズ / 踏み出したばかりの お調子者さ / ずい分ふざけたルールだろ あきれてモノも言わせないのさ / 文句のある奴は ねじふせるだけ」と、日本における外国人労働者の扱いを痛烈かつユーモラスに非難している。ロックの必須条件として社会に一石を投じることがはあるとは今となっては流石に思わないが、今なお続く外国人労働者問題を、1991年にこうして題材にしているように感じられることが中々面白い。
もっとも、この曲は山中さんがバイトをこなしている時、安い賃金で自分よりも過酷なスケジュールで働く外国人を見て感じたことを歌詞にしているということらしいので、歌詞の発露の元となっているのは、社会問題よりも個人的なものに起因しているようだ。2もちろん、個人的な話題と社会的な内容というのは完全に切り離されているわけではないし、後期の曲にも裏側に社会の話題を孕んでいる曲というのは当然あるだろう。しかし、こうして直球で社会問題に切り込むような曲というのは、後期のピロウズではなかなか見られない印象だ。こうした部分もまた、若い熱さが迸る、初期ならではの面白さと言えるかもしれない。
【Share Button】